第一項あらすじ
「夜中にごめん。起きてる?」
「おばあちゃんが、入院したの」
「ねえ、変なお願いしてもいい?」
幼馴染のハルカから、深夜二時にそんなメッセージが届いたのは、数週間前のことだった。 容体の落ち着かない祖母が、急に話し出したのだという。――箱の中身を、返してほしい。
実家の物置から出てきたのは、荷札のついた古い鍵と、輪ゴムで束ねた払込受領証の束。 名義は祖母。昭和五十四年から、一枚も欠けずに、五十年ぶん。 ほとんど半世紀のあいだ、誰かが黙って、その箱の代金を払い続けていた。
そして、どういうわけか祖母は、取り寄せの手続きを孫ではなく、あなたを名指しで頼んだ。
数日後、それは届く。転送の帯が一本掛かっただけの、素っ気ない束。転送印。宛名は「全迷協 御中」。
中には、番号のふられた封筒が五通と、赤い「開封厳禁」の封緘シール。
それから、縁側で西洋人形を膝に抱いた、古い白黒写真が一葉。
差出人の名前は、どこにもない。
あなたはこれを、返しに行かなければならない。
――全迷協
同梱「照合のしおり」 ― 掟 四ヶ条